北欧では、生活の中に魔法使いが存在する。
数々の薬の調合、薬と毒の見分け方、料理を美味しくする調味料の配合、畑を肥やす土の作り方、水を濾過する方法。そういう手法を魔法使いが人々に伝授してきた。
科学が台頭した現代でも、魔法使いは生活の中の隣人である。
「魔法使いの魔法は様々だけど、rulerたる魔法使いは、発狂した人を一瞬で正気に戻したり、強姦を止めたり、相性の良い者同士を引合せたりする、いわゆる性に関わる犯罪や揉め事、相談を担っている場合が多かった」
性に関する営みや悩みもまた、深く生活の一部だ。
誰にでもはできない相談も、解決する手段を持つ魔法使いになら話せる。
「|彼《か》の地方の人々が魔法使いと呼ぶ存在の中には、今の僕らがrulerと呼ぶ存在が確かにいて、第二の性を持つ人々の悩みを解決し、犯罪を防いでいたんだ」
WO自体、世界共通の概念となって百年程度だ。
概念としては新しくても、onlyやotherの性をもつ人々は古くから存在した。そういう人々を助けてきたのが魔法使いに紛れたrulerだった。
「魔法使いの中に、rulerが……。そう言われると、しっくりきますね。onlyやotherのフェロモンもそうだけど、特にrulerのフェロモンは魔法みたいに感じるかもしれません」
晴翔の感覚は、割と一般的だ。
フェロモンを